1: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:cG15Sdvf0
今度の土曜に婆さんの家に行くので今まであった事を書く


3: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:cG15Sdvf0
一番最初に婆さんから間違い電話がかかってきたのは
2年程前だった 

携帯がなったんだけど
かけてくる相手なんてかぎられてたから
番号を気にしないで出たら 

「○○の佐藤(仮名)です。
これからお伺いしますのでお願いしますね」 
と一言言われてそのまま電話を切られてしまったんで
間違いを指摘出来なかった 

かけ直して説明すんのも面倒だったんで
その時は放置してしまった

4: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:cG15Sdvf0
次にその婆さんから間違い電話がかかってきたのは
一ヵ月後くらいだったか 

「○○の佐藤です」と言われたんであの時の人だと思い
「すみません、おかけ間違いですよ」とだけ言ってみた 
「あらー、それは失礼しました。ごめんなさいねー」と
恥ずかしそうに笑って婆さんは電話を切ったんだが 
どうやら知人の番号と似ているらしく
それからもたまに間違いをかけてくる事があった 

俺は元々婆ちゃん子だったから
その婆さんの間違い電話は大して気にもならなかったし 
指摘する度に
「今日は知人とお芝居に行くので
連絡しようと思ったら間違えちゃって」と
予定を話してくれるので 
「そうか、今日はこういう事をするのか」って
見ず知らずの他人の予定を知って
楽しかったってのもあった

5: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:cG15Sdvf0
しばらくして婆さんからの間違い電話が
全然かかってこなくなって淋しくもあったけど
間違えない様な方法を見つけられたんだなと思うと
嬉しくもあった 

ただ、何となく思い出として婆さんの番号は
携帯に「佐藤のお婆ちゃん」と登録しておいた 

それから1年くらい婆さんとは話してなかったんだが
ある日婆さんの番号で電話がかかってきた 
「もしもしー、間違い電話ですよー」
と明るく出てみたんだが 
「タカシ(仮名)さんですか?○○の梅子(仮名)です」と
婆さんはいつもと違う話し方をして驚いた

6: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:cG15Sdvf0
自分はタカシでも何でもないし、
婆さんが苗字じゃなく名前を言うのも初めてだったので 
間違い電話にしてもおかしくないか?と
疑問に思ってしまってしばらく黙ってしまった 

そしたら婆さんは
「今日は庭の梅の花が綺麗に咲いた」
とか世間話を始めてきた 
「あの、お婆さん?間違い電話ですよ?」と返してみたが
「何をおっしゃるのウフフ」と言った感じで 
婆さんは完全にタカシさんと
電話で話してると決めてかかっていた 

これはどうしようかと悩んでいたら
婆さんの後ろの方から女性の声で 
「ちょっとお婆ちゃん!誰と話してるの!」と
大声がきこえてきたかと思うと電話を切られてしまい 
何があったのかさっぱりわからずに
その日は一日悶々としてしまった

9: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:cG15Sdvf0
気にはなるけどこっちからかけるのもおかしいしと
悶々としながら3日程経ったら婆さんから着信 
「タカシさん?○○の梅子です」と前回と同じ話し方だった 

また一方的に話を進めようとしたので思い切って
「お婆ちゃん落ち着いて聞いてください」
と釘を刺してから自分はタカシじゃない事、
以前ちょくちょく
間違いでかけてきた番号だという事を説明した 

そしたら婆さん、しばらく黙っていたかと思うと 
「竹子(仮名)さーん!
ちょっと電話に出てちょうだーい!」と
誰かに向かって叫ぶ 
「ちょっと!お婆ちゃん!」と
背後で聞こえた声は前回電話を叩き切った人の声だった 

その人は不安そうに「もしもし」と電話を変わるが、
こっちも状況がつかめていなかったので 
「あの、その、もしもし」と
テラ不審者状態で返すのが精一杯だった

11: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:cG15Sdvf0
余りにも不審がる竹子さんに今迄あった事を説明すると
「へ?」と裏返った声で聞き返される。
そりゃそうだ 

それから竹子さんはどう答えていいかわからずに
悩んでいたといった感じだったが 
「かなり昔からご迷惑をおかけしてたんですね」と
近況を説明してくれた 

どうやら最初の間違い電話がかかってきた頃は
軽い認知症の症候があったらしく
リハビリも兼ねてよく出かけていた 
ところがここ1年くらいは
本格的にボケてしまっているので
男性は全てタカシさんと思ってしまっている 

タカシさんは婆さんの旦那さんで
とうの昔に亡くなっているが
本人はボケているのでタヒんだ認識がない 
「でも、電話帳すら開いていないのに
貴方の番号を覚えているのかしら?」と聞かれたが 
そんなのこっちに聞かれたって
「さあ?」としか答えられない

13: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:cG15Sdvf0
それからも何度も婆さんから電話があり、
その度に竹子さんに謝られるという状態が続いた 

そんなある日
いつもの様に電話がかかってきたので出てみると
婆さんではなく竹子さんからだった 

「こんなお願いをするのは
図々しいとわかってはいるんだけど」と
お茶を濁す竹子さんに話をきくと 
婆さんが間違い電話をかけた日は調子がいいのか
一日中穏やかにすごすので 
もし時間の都合が合った上で嫌でなければ
電話に付き合ってやってはもらえないだろうか
との事だった 

当時自分は会社を辞めたばかりで
時間は有り余っていたし
正直話し相手が欲しかったという気持ちもあった 

それが果たして
婆さんの為になるかどうかはわからなかったけど
誰かの役にたてるんだったいいかなと思ったし 
「わかりました、タカシさんになりますね」と
竹子さんのお願いを聞き入れて
婆さんの話し相手になる事にした

14: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:bz10jIA+0
>>13 
いい奴だね

15: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:cG15Sdvf0
それからは竹子さんから色々と情報を仕入れて 
○○は地名である事、
タカシさんは元銀行員で
退職後は二人でよく観劇などに行っていた事 
他にも家族構成だの色々と
婆さんに関する事を教えてもらって
出来るだけタカシさんを演じようと思った 

ただ、認知症はそんなに甘くなかった 
それまでタカシさんとの愛を語り合っていたかと思うと
突然「貴方は誰!」と素に返ったのか
電話を切られる事もあったし 
前の日に観劇の思い出を語っていたので
翌日も話の続きをしようとしたら 
「タカシさんは入社したばかりなのに
そんな遊ぶ時間なんてないでしょう?」と
記憶の時間がずれていたり 

ヘタに話を広げようとするとかえってボロが出るから
聞き役に徹するのが一番だとわかったのは 
タカシさんごっこを始めてから
3ヶ月経ってからの事だった

17: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:cG15Sdvf0
でも、どれだけ時間軸がずれていても
変わらなかったのがタカシさんは短歌好きだった事 

サークルか何かでタカシさんが婆さんに
短歌を贈ったのがきっかけで交際が始まったとかで 
「あの歌は~」とか婆さんに言われても
答えられないのが悔しくて勉強した事もあった 

ある日婆さんに
「タカシさんが今私に歌を贈ってくださるとしたら
どんな歌かしら?」と聞かれ 
「梅一輪一輪ほどのあたたかさ、ですかね」と答えたら 
「いやですわ、それは竹子が産まれた時に
贈ってくださったじゃないですか」と笑って言い返されて 
滅茶苦茶恥ずかしかった反面、
それだけ記憶がしっかりしてるなら
認知症治ってほしいと思ってしまった

18: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:cG15Sdvf0
認知症の中で婆さんが素に戻った状態で
対話したのが二度程あった 

それ迄タカシさんと話していた筈だったのに
しばらく無言が続いたら 
「失礼だけど、どちら様ですかね?」と聞かれたので
「タカシですよ」と返したら「違う」と 

でも、そこで何が起こっているのか
説明するのも面倒だったし野暮だったというのもあって 
「私の名前もタカシというんですよ。
梅子さんの旦那さんと同じ名前ですから
親しくさせていただけたんです」 
と大ぼらを吹いてその場を流してしまった 

結果的に「あらまあ、そうだったんですかー」
と世間話が続き、
やがて普段の認知症の状態に戻ってしまったが 
今でもあの時の大ぼらは
判断として間違っていなかったかどうか
疑問に思う事がある

19: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:cG15Sdvf0
一番厄介だったのは
タカシさんが浮気をした事があったらしく
その浮気相手に電話をかけていると思い込まれた時だった 

泣きながら罵倒されて、
自分達の生い立ちを涙ながらに語り、
また罵倒を繰り返すといった具合だった 
この時ばかりは流石に頭にきて
「何でこんな目にあってまで
付き合わなきゃなんねーんだ?」と電話を切りたかった 

でも、ここで電話を切って心の糸がぷつりと切れて…
なんて思うと電話を切るに切れず 
付き合った以上は
最後まで責任を持たないといけないと
自分に言い聞かせて罵倒されまくった 

後々竹子さんに平謝りされて、
その時はつい文句を言ってしまったが 
病気そのものの完治こそ無理でも、
最近は徘徊もなくなっているし
顔つきが大分おだやかになっている 
貴方が電話に付き合ってくれているお陰で
お婆ちゃんは
人として生活出来ていると聞かされた時には 
ああ、自分は誰かの役に立てているんだなと
無駄な誇りをもってしまった

21: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:cG15Sdvf0
ある時、ふと婆さんに電話ではなく
葉書を送りたくなったので竹子さんに住所を聞いた 

というのも、婆さんはたまに
家の何処にもタカシさんがいない事を
不安に思う事があるらしく 
だったら、銀行員の出向で出かけてる、
あるいはちょっと一人旅に出ているという形で 
「タカシさんから葉書がきたとなれば、
梅子さんも喜ぶんじゃないかと思って」と言い 
竹子さんが送ってきてくれた
タカシさんのメモ帳の字体を必タヒに真似て
短歌を書いた葉書を婆さんに送った 

これが大きな間違いだった 

葉書を受け取った婆さんは
その時だけ素だったのかパニックを起こし
過呼吸で倒れてしまったそうだ 

竹子さんの旦那さんには散々怒鳴られ
「もう余計な事をすんな!」と電話を叩き切られてしまい 
タカシさんごっこもそろそろ潮時なのかなと感じた 

でも、婆さんから電話がかかってきて
ニコニコと外の様子だとか
好きなお菓子の話題を聞かされる度に 
「後5回、いや後3回は付き合ってもいいよな」と
ずるずるタカシさんごっこを続けてしまった

47: 名も無き被検体774号+ 2013/08/08(木) NY:AN:NY.AN ID:LCWsGwzx0
おかしいな画面が… 

ばあちゃん幸せだったと思うぞ 
お疲れ 
土曜も楽しんでこい

50: 名も無き被検体774号+ 2013/08/09(金) NY:AN:NY.AN ID:jNgXWRp/O
おばあちゃん子だった全俺が泣いた。 
土曜日がいい日になりますように。
俺も今週末は墓参りに行く予定。

57: 名も無き被検体774号+ 2013/08/10(土) NY:AN:NY.AN ID:AbZekTun0
似せ通話 あの人想う ときこえて 梅の香も 君ありてこそ


引用元:http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1375888951/

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